泣くことあれこれ
なんで、子どもの頃、泣くことがあんなに苦しかったんだろう。
全身で泣いていた。
胸と眼の後ろ側がじーんと熱くなって、
地面が揺れるみたいに泣いて
泣き止んだ後もひっく、ひっくというのが止まらなくて、
二重に見える空気を吸ってぼんやりとしていた。
悩みごとも、世界の色が変わってしまうぐらい逃げようのないものだった。
学校の窓ガラスを割ってしまったとか、くせ毛だとか。
痛み、悩みだらけだった子ども時代をもう一回やり直すのなんて、
100万円もらえても無理だと思う。
子どもは剥き出しだ。大変だ。
大人になって泣いたときは、
蛇口が壊れたように涙が止まらず
でもどこかで「どうしよう、もう替えのハンカチない」とか「電車の中なのにみっともない」とか。
いや、子どもの頃と同じぐらい、痛かったな。
泣いたって世界が変わらないのも同じだった。
大人になって違うことといえば泣いたら悲しみの層が一枚はがれる、というような感覚があること。
誰かに受け止めてほしいわけでなく、
ずれた音を調律するように、涙を流すたびに1音1音の響きを確認しながら、
落としどころを探していく。
散歩して、歩いても変わらないことを思い知る。
漂うしかない1日の終わりに夜がやってくる。
何も救ってはくれないことが寄り添ってくれる。
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