なんてことない日記 コロネ
きのうもこぐまと散歩。
信号を渡ったところの草むらからチリチリと虫の声がする。
透き通って高音で鳥の声に近い。帰り道でも鳴いていた。
「ママ、今日も散歩楽しかったね。すごいうれしかった!」
「でも涼しい季節だともっといいよね。暑すぎるよー」と答えるとちょっと黙っている。
ああ、「いま」が楽しかったんだな。なのに雑に答えちゃったなと思いながらペタペタ歩く。
こぐまは結局、書店から連絡があって週末から働きはじめることに。書店がだめだったと思って決めていた塾バイトは辞退。こぐまが「本屋さんどうしよう。塾のほうがやりたいんだよね」と言ったときに「でも本屋さんやりたかったんでしょ。まあ塾がやりたいなら、やりたいほうはどっちかもいっかい考えてみたら?」と反射的に言ってしまった。こういうふうに、反射的に答えてしまう。塾のほう、やりたいという気持ちをそのまま聞いて、なんにも言わないで、そしたら彼女がその筋道を追っていけるのに。
「散歩楽しかったね」とか「忙しいのにありがとね」とか言われると、もっと傲慢になっていいのにと思う。私は好き好んで書いてばかりいて、忙しくしていて。ふと、自分が大学生のころの夏休みを思い出した。
おじいちゃんとおばあちゃんと一両編成の列車で出かけて、そごうのデパ地下でクリームコロネを買ってもらった。学生らしい貧乏生活があまりになじんでいたので、そのコロネがすごい贅沢品のように思えて私はそごうから出て歩道橋を渡りながら「こんなの買ってもらってバチがあたるわー」と呟いたのだった。するとおじいちゃんは急に怒りだし、「そんなこと言うもんやない!」と怒った。その日、私がバイト先で履き古したくたくたのローファーを履いているのを見て「靴はちゃんとしたのを履かないかん!」って説教もされた。孫がみすぼらしくしているのをみてやり切れなかったのかな。さらにみすぼらしい発言をしたことに怒ったのかな。表面的には「怒り」だったけど、きっとおじいちゃんはいたたまれない気持ちだったんだろう。
こぐまの、ただ優しい気持ち、ありがとうと言ってくれる気持ちを自分の罪悪感で歪めたくない。
気がついたらお盆期間。仕事のメールがあまり来ないから快適。雪のかまくらにこもってカタカタカタと打鍵し続けたい。
寝る前に読む本、いまは『ミレニアム』をシリーズ1から読み返してる。
「ぼくはぜひきみの友だちになりたいと思ってる。きみが受け入れてくれさえすれば」
「でも決めるのはきみだ。ぼくは家に戻ってコーヒーをいれるよ。いつでも帰ってきたいときに帰ってきてくれ」
ミカエルにはいろいろ言いたいことがあるんだけど、こういう会話が染み込むとよく眠れる。
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